最近は、担当している仕事が落ち着いてきたので、読書する時間がしっかりと確保できている。ということで、今年の9月に発売された、藤井太洋氏のマンカインドを読んだ。
やっぱり、藤井さんは「Gene Mapper」でも、「オービタルクラウド」でも、そうであったように、実際に現存する、技術やシステムを誇張、もしくは進化させて、物語の軸に据えるのが巧い作家だなと感じた。遺伝子改変技術、CRISPR、AI生成、メディア、無人兵器、戦争の未来予想図をリアリスティックかつ、探究的に描かれた、この作品は間違いなくScientificなFictionで、僕の求めるSFだった。ただ、いま僕たちが挙げたように、様々な要素が多すぎて、それぞれが持つテーマや問題、問題提起が薄れてしまっているのか否めない印象ではあった。
あとは、ヴィランの行動の動機や理由も少し、弱いなと。ヴィランの過去は忠実にえがかれていたから。過去から現在をもう少し描くことができれば、そこらへんはクリアできたんじゃないかと感じてしまった。
ちょうどいま、読み進めている最中の、ダヴィンチコードで有名なラングドンシリーズの第三作目のインフェルノのでも、偶然にも、遺伝子改良技術が物語の一部分として登場する。そこでは、トランスヒューマニズムの概念と思想が紹介されている。要するに、遺伝子改良技術や、自分たちの人体や身体機能を改変改良する技術は、人類自身が獲得した技術なんだから、それも、人類の進化であるということ。この考えは、斬新だが、理にかなっているとは感じてしまった。決して、僕は優生思想を支持するわけではないが。
あと、この物語の最重要要素の一つ、"ORGAN"。作中では、名前の由来は、使用者が楽器のオルガン奏者のように見えるからだと語られているが、藤井さん自身は、間違いなく、伊藤計劃さんの「虐殺器官」の英語タイトル「GENOCIDAL ORGAN」の"ORGAN"からのリファレンスだよね笑
いつもは、いろいろとメモを取りながら、読むのだが、久しぶりに、がっつり読書ができる時間が確保できたのが嬉しくて、ものすごい勢いで読んでしまい、メモを取り忘れてしまったから、今日はこの辺でおしまい。